WILD THINGS
WILD MY THINGS 私のワイルドなシングス。 Vol.20 SPECIAL

Photographer

KENJI SATO

WILD MY THINGS Vol.20 SPECIAL

ヒマラヤの玄関口、カトマンズで
ワイルドシングスと出会った
時代のキーマンとワイルドシングスがクロスオーバーする連載企画「WILD MY THINGS」。Vol.20 SPECIALは世界中の奇妙な人、物、場所を収めた写真集「奇界遺産」や、TBS系「クレイジージャーニー」で知られ、ワイルドシングスのデナリジャケットを愛用する佐藤健寿さんが登場。
他のアウトドアブランドとは
違って見えた
――佐藤さんはノンネイティブが別注したワイルドシングスのデナリジャケットを愛用していることでも知られています。ところで初めてワイルドシングスと出会ったのはいつですか?

佐藤:あれは2005年のことだったと思うのですが、思い付きでヒマラヤに登ろうと思ったんです。それでネパールを訪れたのですが、しっかりしたアウターを持っていなくて。そこでカトマンズで探して見つけたのがワイルドシングスのアウター。それが初めての出会いですね。
――カトマンズはヒマラヤ登山の玄関口ですよね。

佐藤:そう、だから登山用品がすごく充実している街なんですよ。
――そのモデルは何だったか覚えていますか?

佐藤:デナリジャケットかどうかは、はっきりとは覚えてないのですが、中綿、インサレーション入りのジャケットだったことは覚えています。それほどアウトドアギアに詳しくはなかったけど、他のブランドやアウターとちょっと違った雰囲気に見えましたね。
――それは一般的なダウンと違ってキルティングが表に見えない、モコモコした表情ではなかったからでは?

佐藤:ああ、そうかもしれませんね。あとはタグのロゴがかっこいいなと思いました。それから10年以上経って、2017年にノンネイティブとワイルドシングスが別注でデナリジャケットを作ったと聞き、改めて着るようになりました。
――デナリジャケットを着用して撮影の旅に出掛けるとも聞きました。例えばどういったところへ行きましたか?

佐藤:いろいろあり過ぎて思い出しきれないんですが(笑)、うーん、モンゴル、カザフスタンなんかでも着てましたね。
――やはり寒さが厳しいところになるのでしょうか?

佐藤:そうですね。デナリジャケットは寒さや環境がハードなところでも使えますから。防水透湿性もしっかりしているし、気温が上がってきたときにもいいんですよね。例えばファスナーは全開にして、ベルクロだけを留めて着たり。いろいろと使い勝手がいいんですよ。デナリならではの、斜めのフロントポケットも使いやすいですね。
――今日着ているノンネイティブ別注のデナリジャケットは2019年のモデルですよね。すると2着お持ちなんですか?

佐藤:はい。2017年はカラシ色(コヨーテ)、2019年にはブラックを購入しました。ところどころアップデートも加わっていて、そこがまたいいんですよね。
ミリタリーの装備と似ている
撮影旅のギア
――撮影の旅でお気に入りやマストなアイテムはありますか?

佐藤:メインカメラはライカのM10-RとM11。やはり旅の撮影では長距離の移動が多いため、小型で機動力の高さを重視しています。あと小さくて軽いと、撮影のチャンスも増える。例えば狭いバスのなかでも、撮りたいものがあれば、大きな一眼レフとは違ってサッと撮影できますからね。
佐藤:それと暗い廃墟によく行くので、フラッシュライトはマスト。バッグのハーネスやモールに装着したりもします。そうした拡張性でいうとイーグル インダストリーズのポーチも好きですね。イーグル インダストリーズは米国ではお馴染みのミリタリーブランドで、丈夫で使い勝手がいい。バッグのベルクロやモールシステムに外付けできるのも便利です。カメラバッグとミリタリーギアに求められるものって似てるんですよね。
――なるほど。まさにバッグやギアの実用的な機能を、リアルに活用しているんですね。

佐藤:最近って、ファッションのバッグでもモールが付いているものが増えてるじゃないですか?
――たしかに多いですよね。

佐藤:モールの付いている位置などを見ると、わかってて付けてるのかどうなのかと、思うことはありますね(笑)。
――なるほど(笑)。
佐藤:旅の必需品でいうとこの小型ナイフとか。ビクトリノックスの多徳ナイフのMOD品(ユーザーがカスタムしたもの)なんですが、よくあるビクトリノックスの多徳ナイフから必要な機能だけ残して要らない中身を抜いて、ブレードをアメリカのナイフメーカー、スパイダルコのブレードに差し替えています。これはアメリカのナイフビルダーに特注して造ってもらいました。
――佐藤さんといえば、ダナーライトのイメージがある方も多いと思います。

佐藤:ダナーライトはかれこれ20年くらい履いていて、これは4足目かな。街の中で履いていても、あまり変な目で見られないし、ハードな場所にもそのまま行ける。そして東京で履いてても違和感がなく汎用性が高い。シームレスな使い勝手はデナリジャケットと似てる感覚がありますね。
「意味のないディテールは一切ない」
ポーターとのカメラバッグ
――佐藤さんはポーターとのコラボでカメラバッグも手掛けられましたよね? かなり試行錯誤を重ねたとか。

佐藤:そうですね。3年くらいかけて完成したんですけど、ポーターの方からは「えぐい、2度と作れない」といわれました。
――そうなんですか(笑)。このコラボはどういう経緯で生まれたんですか?

佐藤:まずポーターの方と知り合う機会があって。そもそもなんですがカメラバッグって、あまりかっこいいモノがないんですよ。アメリカのドンケはなかなかなんだけど、保護性が弱い。テック系で人気のピークデザインはすごく収納が豊富なんだけど、詰め込みが利かない。その中間くらいのカメラバッグが欲しいんですよね、というような話をしてたら、「じゃあやりましょう」という流れですね。
――作りやディテールは佐藤さんのリクエストなんですか?

佐藤:ほとんどがそうですね。例えばメイン室のストラップって、カメラバッグにはなかなか付いてないんですよ。ただこれはすごく重要で、カメラレンズとか重たい機材を入れても、ストラップを締めることで重心が安定して保護性が高まる。カスタムにて自分で付けちゃう人もいるくらいです。これは絶対に付けたかった。あとは荷物量に応じてマチを変えられるサイドベルト。タウンユースで荷物の少ないときに調節できたり、海外だとバスや飛行機内ですごく取り回しが便利になるんですよね。フラップ内には今はほとんどなくなりましたけど、紙で発行された長いエアチケットを収納するのに便利な、隠しポケットを。背面にはカメラバッグでは珍しい、スーツケースにキャリーオンできるループを設けていたり。
――すごく考えられたディテールですね。よく見ると付属パーツも上質なものが使われています。

佐藤:そうですね。フラップのバックルは、片手で簡単にしっかり着脱できるフィドロック。ショルダーストラップには過酷な環境下でも着脱しやすいコブラバックルを使っています。例えば北極などで重量3㎏のバッグを肩掛けしたり、下ろしたりすることは本当に大変なので。どのディテールも意味のないものはありません。
――素材はコーデュラナイロンですか?

佐藤:はい。500デニールでもよかったんですけど、どうせならいくところまでいってしまえと、非常にタフな1000デニールにしました。
――頑強なミルスペックばりですね。タグも色を変えていますよね?

佐藤:たぶんかなり珍しい、オールブラックにしています。特別なモデルにしか使われないと聞いてます。
――ここまでくると、プロダクトデザイナーばりの完成度ですね! 今後も何らかを期待したくなります。

佐藤:いえいえ、とんでもない。ただ本当に、ポーターには親身に情熱的に協力してもらいました。
――発売して即完売でしたよね。

佐藤:2020年の発売だったんですが、正直コロナ禍のなか、こうしたトラベルカメラバッグのニーズってあるのかと不安でしたが、幸い完売となってよかったです。すぐに某アプリで、定価の約3倍の18万とかで売られていたと聞きましたが・・・(笑)。
――プロダクト、ギアへの見識もすごい佐藤さんですが、ワイルドシングスの2022 FALL & WINTERで気になったアイテムはありますか?

佐藤:やはりデナリジャケットが好きですね。僕の服はブラックとオリーブが中心なので、まだ持っていないオリーブが欲しい。それに今シーズンから、防水透湿性としなやかさを備えたパーテックスのシェルを使っているんですよね。
佐藤:着てみると、すごく軽くしなやかで、着心地がいい。これで防水仕様っていいですね。衿高で防風性に優れるのも嬉しい。ライニングの大ぶりなメッシュポケットも、デナリの便利なディテールですよね。ややゆとりがあるクラシカルなシルエットは、今の時代感もあってタウンユースにも使いやすいと思います。
PROFILE
佐藤 健寿
写真家
世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影し、写真集『奇怪遺産』シリーズが異例のベストセラーに。約20年にわたる作品群をまとめ、アジア、アフリカ、北極圏まで120か国を網羅した608ページの写真集『世界』も大きな話題を呼んだ。10月から復活したTBS系「クレイジージャーニー」でもいち早く出演。今後も世界各地での撮影取材が控えている。
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