WILD THINGS

vol.2 - 後編 -
猪野正哉
Masaya Ino
焚き火マイスター
――焚き火マイスターとしては、どういう活動をしているの?
Masaya:焚き火についての講演やワークショップ、イベントで焚き火の懇親会やコンサルティング、メディア出演などですね。講演やワークショップでは、焚き火のやり方や火のコントロールなどを解説したりしています。
――人気のテレビ番組にも出演してたよね?
Masaya:ありましたね。あれからいろんな人に、焚き火について聞かれるようにもなりました。でも無闇にテレビ出演するつもりはなくて。焚き火やアウトドアについてのチャンピオンを決める番組からオファーを頂いたのですが、そちらはお断りしました。
――どうして?
Masaya:焚き火は競うものじゃないから。
――なるほど。焚き火に関する講演やイベントは、以前よりも増えてきてる?
Masaya:そうですね。全国各地から呼ばれますよ。行ってみると意外なんですが、女性のお客さんが多いんですよ。とくにイベントは、8割くらいは女性の方ですね。はじめの頃は「人前でどれだけやれるか?」と、緊張していたこともあったけど、最近はあんまり教えないスタイルに変わってきました(笑)。むしろ、「皆さん、たくさん失敗してください」って言ってます。
――教えない、というと?
Masaya:焚き火って別にやろうと思えば普通にできることだし、最初にスキルを教えちゃうとおもしろくないでしょう。自分なりに突っ走ってやってみて、結果的にうまくいこうが失敗しようが、それがその後の楽しさ、モチベーションにつながると思うんです。あと火が思うようにつかなかったり、うまくいかない。そういう不自由なことを経験すると、普段送っている生活のありがたさを知ることができるしね。もちろん全然教えない、というわけではないですよ。焚き火って失敗したり、労力を割いたり、そういう無駄な時間をいかに楽しめるか、ってものでもありますからね。とにかくやるほどにスキルはついてきますね。
――焚き火のスキルって、例えばどういうことがあるの?
Masaya:例えば火の粉がなるべく飛ばないようにコントロールすることだったり、木材選びだったり。以前、とある会社のイベントで焚き火の講師として呼ばれたのですが、あえてアウトドアっぽい服装ではなく、いつものオンタイムのスーツで来てもらうようにお願いしました。そうして火の粉が飛んでスーツに穴が開かないような、火のコントロールを実践したりしたこともあります。あと上級者はみんな火打ち石で火を着けてるようなイメージがあったりするけど、全然そうじゃなくて大丈夫。はじめはライターを使って、着火剤などをバンバン入れて、ガスバーナーで燃やしたりしてもいいですよ。焚き火は過程よりも、焚き火を囲む楽しさの方が重要ですから。
焚き火のいいところは、とくに何かをしゃべらなくてもコミュニケーションがとれるところ。 無言でボーっと過ごしてても、いい気分だなんて他になかなかないでしょう。
――では猪野さんの思う、焚き火の魅力ってどんなところ?
Masaya:やはり癒し効果があるところですかね。炎の揺らぎにはリラックス効果があるとされていて、疲れているときなどにもいいですね。あと気の置けない仲間や友人と、焚き火を囲んでるときの楽しさ。焚き火で食材を焼いて、お酒を飲んだりしてるときも楽しいですね。また焚き火のいいところは、とくに何かをしゃべらなくてもコミュニケーションがとれるところ。無言でボーっと過ごしてても、いい気分だなんて他になかなかないでしょう。
――他に猪野さんオススメの焚き火の過ごし方、スポットなどはある?
Masaya:ハンモックに揺られながら過ごすのもいいですね。個人的に好きなのは、火が勢いよく燃えてるときに、水をぶっかけて一気に消すのも楽しいですよ(笑)。焚き火ってマナーはあるけど、ルールはないから。場所でいうと豊洲のバーベキュー場は、意外な穴場ですね。原始的な焚き火と、向こうに見える都会のビル群のコントラストがおもしろいんです。あとはなんといっても、火が着いて楽しけりゃいいんですよ。格好つける必要はありません。アウトドアっぽい哲学、服装などで武装しなくてもいいと思う。私は極端な話、火の粉で穴が開いてもいい服を着て、焚き火を囲むくらいの方が好き。だって火の粉や穴が開くのが気になるんなら、焚き火はやらない方がいいはずだから(笑)。肩の力を抜いて過ごせることが、焚き火の一番の楽しさです。
Vol.3はtoe、the HIATUSでの活動や木村カエラをはじめ、多くのアーティストから引っ張りだこ、リスペクトを受けるドラマー柏倉隆史さんのインタビューを掲載予定です。 -Vol.3 2月中旬公開予定
Profile
猪野正哉/Masaya Ino
アウトドアプランナー/焚き火マイスター 1975年千葉県千葉市出身。 浪人生時代に応募したオーディションに受かり、「メンズノンノ」専属モデルを 2 年間務めたのち独立。 ファッション誌を中心に、モデルやライターとして活躍するも、30を越えて活躍のフィールドを徐々にアウトドア業界へと移す。 2015 年から実家のある千葉市で、アウトドアスペース「たき火ヴィレッジくいの>」をスタート。 焚き火を中心に、幅広いアウトドアアクティビティを通じて、 自然や人の魅力と共存する怖さとの両面を伝える活動に勤しんでいる。 エネルギー源は、お酒とカレー。趣味はサッカー。
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