WILD THINGS
FIRST WILD THINGS PROFESSIONAL WORK
HARDWOOD株式会社
森 広志 | 片岡 日出美

FIRST WILD THINGS

林業×テクノロジーで革命を起こす
知的でロジカルな現場。

WILD THINGS設立当初からのコンセプト「LIGHT IS RIGHT “軽くてタフで無くてはいけない”」。この原点に立ち返り、ハードでタフな現場で働くプロにWILD THINGSのギアを実際に着用・体感してもらい、その本領を発揮する連載企画「FIRST WILD THINGS」。Vol.01はチェンソーや高所の作業で危険を伴う林業の現場を訪ねた。

科学的な「樹木医」と技術職「木こり」を
両立するハイブリッドな林業。

巨木にセッティングしたロープを颯爽と登り、チェンソーで次々と木の枝を切り落としていく。その仕事ぶりは、命の危険と隣り合わせの過酷な現場ということをつい忘れてしまいそうなほど、軽やかで鮮やかだ。

今回、取材したのはHARDWOOD株式会社(以下HARDWOOD)の森さんと片岡さん。同社の一番の特徴は、木を伐採したりするいわゆる「林業」と、樹木の医者である「樹木医」を掛け合わせたアプローチで、これまでのイメージとは一線を画す、林業の新たな形を生み出していること。ハードな現場はもちろん、学会などのアカデミックな仕事もあり、その内容は多岐に渡っている。

状況に合わせた最適な選択ができる、
「樹木医」という仕事。

 「樹木医」という仕事を耳にしたことがあるだろうか。その名のとおり樹木の診断・治療をしたり、森林の調査・研究をしたり、公園緑地の計画や管理などを行う、樹木の専門家だ。HARDWOODでは、主に片岡さんが樹木医の業務を担当している。

「樹木の状態を的確に診断し、それぞれに合わせた必要な対策を提案するのが、樹木医の大切な仕事です。専門知識があるからこそ、不調の原因を特定して土壌から改良したり、伐採を必要最低限に抑えたりすることもできるんです」
今回のクライアントは、静岡県・熱海市の、海と山に囲まれた長閑なエリアの一角にあるマンション。建物の横に立つ巨木クスノキを診断、必要であれば伐採して欲しいという。クスノキは屋上まで届きそうなほど大きく、周囲でもひときわ目立つ存在だ。
まずは片岡さんの診断からスタート。
「触診で樹皮の状態をチェックしたり、望遠鏡で枯れ枝や虫の被害を確認したり。CTスキャンのような機器を設置し、音が伝わる速さで中が空洞になっているかどうかを診断することもあります。電気を流して、電気抵抗や樹体内の水分状態を確認できる機器もあるんですよ」
樹木医としての科学的知見と、精密機器による測定で得たデータで、樹木の状態をしっかりと診ていく片岡さん。業界的には今後、AIや3Dなどの技術も取り入れられていくという。林業という言葉からは容易に想像できない、とても知的なアプローチだ。
診断の結果、このクスノキの樹勢は良く、伐採の必要性は高くないという結論に。
「木そのものは元気でしたが、傾斜地に立っており倒木のリスクを秘めていること、枝の下が小学生の通学路になっていること、正面に民家があることなど、周辺状況を理由として、マンション側の強い希望で伐採が決定しました」
樹木医の仕事はそこまでハードではないと言いつつも、きつい斜面を登ったり重い機械を運んだりとアクティブに動き回ることも多い。片岡さんが着用している「MIMIC LIGHT VEST」はファスナーポケットや裾ドロストなど便利なディテールが満載だ。インに着た「WOOL TEE」は速乾性のあるウールで汗をかいても快適。「WINTER LAX PANTS」はストレッチ素材で動きやすい。

現場力が必要なクライミングで
巨木に登り、安全に伐採。

樹木医は診断が終わったら、一般的には木の伐採はしない。だがHARDWOODは、森さんをはじめとする高い現場力を持つ「木こり」が在籍しているため、診断・治療・伐採を一手に引き受けることができるのが強みだ。
また、一口に伐採と言っても様々な種類があり、今回取り組むのは「特殊伐採」。住宅地など、クレーンやレッカーが入れない敷地でも安全に伐採できる技術だ。
まずは枝を落とし、幹だけの状態にしてから、幹を上から少しずつ切っていく。切った木はロープで慎重に降ろす。住宅や道路に被害が出ないように、少しずつ伐採していくため、シンプルな伐採よりも圧倒的に時間と労力を要する。
中でも過酷なのが、ロープを使って高木に登って伐採する「ロープワーク」。安全に伐採するための知識と高い技術を持った人でなければできない仕事だ。今回のクライマーは、森さんと若手のエース中尾さん。現場で培ったスキルを駆使して、軽々と登っていく。

だが、クライマーだけでは作業は進まない。伐採して降ろした木を下で受け取るグラウンドワーカーとの連動は必要不可欠だ。さらに、高所作業車を併用することもあれば、木の下が道路の場合、交通整理もしなければならないため、チームワークがとても重要になってくる。
そんなHARDWOODの精鋭メンバーたちは、決まった場所で仕事をすることは少なく、全国各地の現場を飛び回っているという。
都市部が多い樹木医の仕事のほか、山での伐採や森林調査なども手掛けており、その活動領域はどんどん広がっている。
森さんが着用している「MIMIC LIGHT VEST」は、十分な強度を備えつつも軽くて動きやすい。中に着たのは、撥水性や柔軟性に優れ、温度調整もしてくれるテック素材の「PRIMALOFT EVOLVE HOODY」。どちらも過酷な作業をサポートする高機能ウェアだ。

ハードな現場だからこそ、
実力のあるギアが求められる。

命がけの仕事だからこそ、道具には並々ならぬこだわりがある。
チェンソーは様々なサイズを使い分け。毎日目立て(やすりがけ)をするなどメンテナンスを行う。使用しているロープは用途によって分けられ、それぞれ3〜5トンにも耐えうるものだ。
「確実なものを選んで、丁寧にメンテナンスしています」
服装に関しては、チェンソーを使用する際、特殊な防護パンツを身につけることが義務付けられている。そのほかは特に決まりはないが、いくつかの条件でウェアを選んでいると話す。
「まずはタフであること。すぐ破けてしまうと困るので、作業に耐えられるしっかりとした強さが必要。また、真冬でも汗だくになる現場なので、すぐ乾くものがいいですね。今回着用したWILD THINGSのプロダクトは、現場にマッチしていると思いました。着心地もとてもいいですね」と森さん。
 片岡さんは、黒をメインにしたクールなスタイリングに映える、インパクトのあるグラフィックTシャツ「WILD-TEARER TEE」を着用。
「楽しみながら仕事をしたいから、自分の気分が上がるものを身につけることも大事。ウェアやギアは、見た目も重視して選びます」

テクノロジーもどんどん取り入れて
林業のイメージを塗り替えたい。

HARDWOODが、従来の林業から派生した様々な領域にチャレンジしている背景には、「一次産業を盛り上げたい」という想いがある。

「今の林業は新しく若者が入ってきても、長く続かない人が多いのが現状。それを打破したくて、林業って面白くてカッコいいなと思ってもらえるように、まずは自分たちが楽しむこと、そして技術を活かしながら高い収益を生み出せる仕事を増やすことを目指しています。最近はじめた事業の一つは、樹木の傾きを測定してクラウドに送信し24時間体制でモニタリングできるセンサー『ツリチル』の普及です。他にも樹木医学会での発表など、現場とは全く違うアカデミックな世界も。今その双方には距離があるので、橋渡しできるような存在になれたらいいな、と思っています」と森さん。
日本ではあまり知られていないが、例えばドイツは林業先進国で、フォレスター(森林官)という森づくりの専門家は名誉ある仕事とされているそうだ。「アーボリスト」と呼ばれる樹木のスペシャリストもいて、日本でもその需要は少しずつ高まっている。森さんも日本アーボリスト®️協会の研修を受けた一人だ。
片岡さんも、公園管理やイベント企画など、幅広いジャンルの仕事を手掛けている。
「私は木や森が好きで、しかるべき資格を模索して、この仕事に辿り着きました。実際に樹木医として働いてみたら、自然に囲まれた現場で、女性でもやれることがたくさんあって、色々な角度から興味深い仕事に取り組めるので、とてもやりがいがあります。多くの人に知ってもらい、目指してもらえたら嬉しいです」

人と樹木にとっての理想的な社会へ。飽くなき向上心を持ち、新たな道を切り拓いているHARDWOODが描く未来に、これからも注目していきたい。
PROFILE
(L)森 広志
HARDWOOD株式会社 代表取締役
南伊豆で林業に11年間従事し、現場作業や森林施業プランニングのほか、ツリークライミング®️体験などを積極的に行う。樹木医の資格を取得後、HARDWOOD株式会社を設立。日本アーボリスト®️協会の研修課程も終了し、世界水準の知識と技術を併せ持つ。
(R)片岡 日出美
HARDWOOD株式会社 取締役
大学卒業後、住友林業を経て樹木医専門会社に転職。樹木の診断や治療、民間緑地の管理などに携わる。樹木医学会員としても知識・技術の研鑽に励みながら、2019年HARDWOOD株式会社を立ち上げ、取締役に就任。3児の母でもある。
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