WILD THINGS

vol.4 - 前編 -
柏倉隆史
Takashi Kashikura
音楽家/ドラマー
――「天才」、「歌っているかのよう」、「ドラムを聞いて初めて涙が出た」、と賞賛される日本屈指のドラマー、柏倉隆史さん。プロミュージシャンや音楽好きには言わずと知れた存在ですが、普段は主にどういった活動をしているの?
Takashi:仕事としては、バンドのサポートドラマーとして、レコーディングやライブに参加しています。例えば木村カエラちゃんとは長く仕事をしてますし、今日はACOさんのライブのリハーサルをしてきたところです。デビューはトイズファクトリーから1998年にREACHというバンドで。そのあと2000年に結成したtoe、2009年からELLEGARDENの細美武士くんが立ち上げたthe HIATUSで活動しています。
――それぞれの比重などはあるの?
Takashi:きまった比重というのはとくになくて、そのときのバンドの活動次第ですね。ツアーやレコーディングに入ると、そのバンドの演奏が自然と多くなります。
――さまざまなバンドから引っ張りだこの柏倉さんだけど、ドラマーになったのはどういったきっかけ?
Takashi:一番最初のきっかけは、3、4才の頃に姉と地元の合唱団に入ったことですね。その頃からパーカッション、打楽器に興味があったんだけど、6歳にならないとドラムは叩けない、という決まりがあって、早くドラムをやりたいと思いながら通っていました。それから小1になってドラムをやり始めて、卒団する中学3年まで活動していました。
――バンドは組んだりしなかったの?
Takashi:中学のときにコピーバンドを組みましたよ。高校からオリジナルで曲を作るバンドを組んで、その頃だけスタジオに通ってドラムを教えてもらったけど、他はほとんど見よう見まねで独学みたいな感じだった。ボーンズブリゲードのスケートムービーに流れる音楽に影響を受けたり、真逆にCassiopeiaのようなフュージョンのテクニカルな部分に憧れたり、いろんなカルチャーに影響されながらの日々でしたね。スケボーも小さい頃のよりどころでしたし、まあ’80年代後半、’90年代の少年ですよね。
――なるほど、まさにそういう世代なんだね。プロになろうと思ったのはいつ頃?
Takashi:高校の頃から考えてました。
――他に家族に音楽をやっている人がいたの?
Takashi:いや全然。親父はがっちがちのサラリーマンなんだけど、好きなことをやらせてくれました。あと高校を卒業する頃はBRAHMANやBACK DROP BOMBなどたくさんのバンド、が新宿のAntiknock、高円寺2000v、渋谷GIG-ANTIC、横浜クラブ24、懐かしい……(笑)。そこらへんでライブをやっていて、当時DAMAGEってバンドで対バンしたり、そのあと後いろんなバンドがメジャーデビューしていくんですが、各々きちんとシーンを作っていった。その後、私もREACHというメロコアバンドでデビューして。当時のシーンはとても夢がありましたね。
—―そしてREACHのドラマーとしてプロデビューするんだ。AIR JAMやDEVILOCK NIGHTにも出演してたし、当時、一世を風靡したメロコアシーンでも脚光を浴びていた。柏倉さんはその頃から、スゴ腕のドラマーとして注目されてたよね?
Takashi:ありがとうございます。当時のシーンを知る大人にとっては懐かしいですよね。ストリートカルチャーやファッションシーンともリンクしていて、とても勢いのある時代でしたね。メジャーデビューもして、「これで一生食っていけるのかな」なんて漠然と考えたこともあったけど、シーンの人気も落ち着いてきて2003年に解散したんです。それからアルバイトした時期もあったり、別にバンドでなくてもいいかな……、と思うようになってきて。スタジオミュージシャンだったり、いろいろなバンドのサポートメンバーとして仕事するのもいいなと、いろいろなものが見えてくるようになった。そこからですね。今の“野良ドラマー”のスタイルになったのは。
――でも、今も人気のtoeはすでに活動してたよね?
Takashi:そうですね。REACHと少しかぶっていて、2000年からやっていますね。
――toeの他のメンバーも、toe以外の仕事をしてるよね?
Takashi:はい、ギターの山嵜くんは内装やインテリアデザイン、ベースの山根くんはF/CEなどファッションデザイナーとして活躍してますね。ギターの美濃くんは私と似ていて、音楽が生業でレコーディング・エンジニアをしています。
――そうしたスタンスは何か理由があるの?
Takashi:’90年代後半からTortoise、Pele、Ghost and Vodkaなど、ざっくりいうとパンク、ハードコアの人たちがインストを始める流れがあって、ああいう音楽を俺らもやりたい、と揃ったのがtoeのメンバーです。レーベルも山嵜くんと美濃くんが設立した自主レーベルで、商業的な縛りがなく、音楽をやりたいから。バンドを始めたときから「こういう音楽をやりたい」というのは、ほとんど変わらずに続いてるし、みんなやりたいことしかやらない聖域みたいなところですね。toeをやりたいから、みんな本職をもっているようなところはあるかもしれませんね。
日本屈指の゛ファースト・コール・ドラマー″、またtoe、the HIATUSのメンバーとして活躍する柏倉さん。次回は突如訪れた苦悩や、バンドマンの喜びを語るインタビューをお届けします。
Profile
柏倉隆史/Takashi Kashikura
ドラマー

1976年神奈川県川崎市出身。’90年代のメロコアパンクシーンを牽引した、DAMAGE、REACHの元ドラマー。2000年に、いま世界的な人気を誇るtoeを結成する。2005年から木村カエラのサポートミュージシャンとなり、ACO、コトリンゴ、黒木渚、ももいろクローバーZ、Supefly、ポルノグラフィティなど、さまざまなアーティストのレコーディング、ライブに参加。2009年からはthe HIATUSのメンバーとしても活動している。
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